2018年4月、大相撲春場所巡業で京都府舞鶴市の市長が挨拶中に倒れ、人命救助のため土俵の上に上がり人命救助に努めていた女性に「女性の方は土俵から降りてください」との報道が問題になりました。
相撲を見に来ていたファンの間からは「女性が上がっていいのか!」との声が上がっていましたが、女性蔑視、時代錯誤などの声が後を絶ちません。
ではなぜ女性は土俵には上がれないのでしょうか?
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女性は土俵に上がれない?
2000年、太田房江大阪府知事が「土俵に上がり優勝力士に知事杯を渡したい」という意向に相撲協会は許可を下ろしませんでした。
また、2010年、元大関千代大海の断髪式では「入門のきっかけを作ってくれた母に、何が何でもハサミを入れて欲しい」との願いも土俵の上では許されず、千代大海は最後の師匠九重親方による止めバサミ直前、いったん土俵から降りて母親にハサミを入れてもらいました。
このように過去様々な場所で女性が土俵に上がれないということが問題に上がってきました。
女性は汚れている?
古くから土俵の上は「神様がいる場所」とされ、毎場所、横綱による土俵入りは、四股により邪悪なものを踏み鎮めるという意味があります。
また、本場所前には出雲大社教神官による神事が執り行われています。
神道では女性には生理があることから「血」=「汚れ」とされてきたため、そのような「神聖なもの」である「土俵」は女人禁制とされてきました。
土俵の上だけでなく、このような「神事」には女人禁制が多いと言われています。
神社参拝時、生理中の女性は鳥居をくぐらず脇から通らなければならないとか、御輿(みこし)などの神聖なものに触れてはならないなど、女性=汚れという思想は現代でもなかなか拭えていません。
床山も女性はなれない?
日本相撲協会所属の力士の髪を結う「床山」という職業がありますが、この職業は理美容師の免許はいりませんが、採用基準として【性別が男性であること】ということが明記してあります。
そのためどんなに髪を結うのがうまい女性でも、女性であるというだけで「床山」にはなれないのです。
女性が髷を結うと首のケガをするとか汚れるなどの言い伝えがあり、結うことが許されていないためです。
大銀杏(おおいちょう)
大銀杏とは、大相撲において十両以上の力士たちが結うことのできる髪型です。
髷(まげ)の先端が銀杏(いちょう)の葉に似ていることからこの名前がついたと言われています。
入門後間もないような力士たちは普通のヘアスタイルをしています。
それが伸びてくると鬢付け油(びんつけあぶら)でオールバックにしし、結える長さになるとちょんまげにします。
大銀杏は十両以上の関取や、幕下力士で十両と取り組む力士、さらに弓取り式をする力士のみが結えることができる髪型なので、大銀杏に結えることは入門したばかりの力士たちにとってあこがれなのです。
他にもあった!女性禁止の職業とは?
床山さんの他にも昔から女性はなれないと言われている職業があります。
「杜氏」と呼ばれる日本酒の醸造工程を行う職人は、女性はなれないと言われてきました。
理由としては、女性はぬか床などを常日頃触っているので、酒粕にぬかの臭いが移ると言うことで禁止だったそうです。
しかし実際は力仕事が多く、女性は少ないだけのようです。
この他、女性禁止と言われていた「寿司職人」も男性の住み込み職人が多く、女性の更衣室を確保するのが難しいといった現実問題が原因のようです。
近年では女性もこのような男性専門の職業とされてきた職業に就く方も多く、職の幅に広がりを見せています。
今後、時代の流れと共にその職業から男性または女性だけのものというのが無くなってくるのではないでしょうか?
相撲においては床山さんや行司など、いつの日か女性が行う日が来るかもしれません。
古くからの男性の聖域や女性の聖域に両者が入り込んでくるのは時代の流れでもあるのでしょうが、何でもアリの時代になってしまうのもまた寂しいものがある気もします。